ソフトウェア企業の現状

低迷の続く米国Yahoo!が、キャロル・バーツ(Carol Bartz)氏を同社のトップに据えた。アナリストたちは、バーツ新CEOに課せられた最初の使命は、オンライン企業のパイオニアであるYahoo!がかつて身にまとっていた「輝き」を回復することだと主張している。 ▼新CEOは数々の企業役員を経験した大ベテラン  Yahoo!は1月13日夕方、Autodeskの前取締役会長であるキャロル・バーツ(Carol Bartz)氏を社に迎え、CEO(最高経営責任者)および取締役委員会メンバーに任命したことを発表した。  バーツ氏は、前CEOジェリー・ヤン(Jerry Yang)氏の後任となる。ヤン氏は、Microsoftとの買収交渉が決裂し、Googleと結ぶはずだったオンライン広告提携もうまくいかず、2回にわたるレイオフを実施したのちの2008年11月、同職を辞任していた。  CEOや経営トップ層の動向を分析しているアナリスト企業、Management CVのCEOを務めるレニー・ポンバート(Renny Ponvert)氏は、「とにもかくにも、バーツ氏はYahoo!社員の士気が衰退しているのを食い止めなければならない」という。「Yahoo!を窮地に陥れたのは、(ヤン氏の前にCEOを務めていた)テリー・セメル(Terry Semel)氏だ。同氏のせいで社員のやる気は大いにそがれ、数多くの優秀な人材が流出した。(バーツ氏は)社員に自信を取り戻させる必要がある。Yahoo!が再び、世間の注目を浴びるように持っていくのだ。バーツ氏は、おそらくそうした基本に立ち返るだろう」(ポンバート氏)。  もっとも、すでに一部のアナリストたちは、バーツ氏には一般消費者向けインターネット・サービスやメディア企業での経験がないことを指摘し、その資質に疑問を唱えている。バーツ氏は、2006年にCADソフトウェアおよびサービス企業であるAutodeskの取締役会長に就任するまでの14年間、同社の社長兼CEOを務めていた。それ以前には、Sun MicrosystemsやDigital Equipment(DEC)、3Mなどの取締役に就いた経歴も持つ。  調査会社Forresterの主席アナリスト、デビッド・カード(David Card)氏も次のように述べる。「(経営経験豊富なバーツ氏にとっても)今回はまったく勝手が違うはずだ。バーツ氏は『顧客を知り、顧客を第一に考えることが重要だ』と言う。だがYahoo!には、同社のサービスを利用するユーザー、ユーザーに売り込みを図る広告主、さらにパブリッシャー、つまり他のオンライン・メディア企業という3種類の顧客がいる。バーツ氏は、性格の異なる3種類の顧客について、それぞれを満足させ続ける方法を考えねばならない。バーツ氏はソフトウェア企業の元幹部であり、シリコンバレーでは尊敬を集める経営者だが、コンシューマ・コンテンツ・ビジネスは畑違いである」(カード氏)。  だが、ポンバート氏は、バーツ氏のCEO就任には何の問題もないと考えている。  「今回の人事には多くの人が驚いたようだが、わたしはバーツ氏こそ適任だと考えている。CEOの仕事とは、戦略を練ること、壮大な計画を実行に移すこと、そして資本を調達することだ。バーツ氏がインターネット畑の人間であるかどうかは関係ない。あらゆるCEOの中でも、同氏は上位20%に入る実力の持ち主だ」(ポンバート氏) ▼鍵を握るのはやはりMicrosoftの動向か  複数のアナリストは、シリコンバレーのみならず世界中のビジネス界で、バーツ氏は自らの意見を臆せず口にする「一徹者」として名が通っていると証言する。「ヤン氏の穏やかで軽やかなスタイル」と対照的なバーツ氏のキャラクターは、それだけでYahoo!にとって良いカンフル剤になると、Technology Business Researchのアナリストであるアラン・クランス(Allan Krans)氏は分析している。  「Yahoo!はGoogleにマーケット・シェアを奪われ続けている。広告モデルやコンテンツ配信技術など、市場の様相はこの8年間で劇的に変わったが、(Yahoo!は)そうした変化の中で優位を保つのに苦慮している。同社は今後数カ月以内に幾つかの決断を下さねばならないが、(バーツ氏が)そこでどのような動きを起こすのか、非常に興味深い。コスト関連の部分やビジネス・モデルの根本にかかわる部分で、大きな決断を迫られるだろう。検索サービスの分野では、同社はこれからもシェアを失うことが予想されるが、それを食い止め、改善していくつもりなのか、それともデジタル・メディアなどの他分野にターゲットを移すのか。いずれにせよ、同氏は半年のうちに難しい決断を下すことになる」(クランス氏)。  クランス氏、ポンバート氏の双方とも、今後の同社取締役会の決定について、Microsoftによる買収/合併提案が大きく影響してくるだろうと指摘する。  「Yahoo!の取締役会には、同社の売却に積極的な態度をとる陣営もいる。現在の緊張状態は今後も続くだろう。だが、新しいCEOを迎えたことで、恐怖や不安もだいぶ収まるはずだ。役立たずになったCEOを排除し、まだ方向は定まっていないにせよ、とりあえず前へは進めるようになったのだから。もっとも、ある程度の(一部事業の)撤退はあるだろうが」(クランス氏)  ポンバート氏は、経歴が立派なら報酬も高いバーツ氏を取締役会に招き入れたのは、買収に向けた調整を行わせるためではないかと推測している。「バーツ氏を雇うには多額の金がかかる。考えもなしにあれほどの人物を選ぶわけがない。何か大きなプランに基づく人事だったのだろう」(ポンバート氏)。  一方、カード氏は、Yahoo!にはまだ多くのチャンスが残されており、十分に「引き揚げ可能」だという。またクランス氏は、オンライン・メディアに変革が起こり、経済の先行きも不透明なこの時期にバーツ氏が取締役となったことで、Yahoo!は数年以内に必ず一定の進化を遂げるだろうと述べている。  「2010年は重大な選択の年となるはずだ。今現在、彼らが下している判断が、5年後のYahoo!の姿に大きな影響を与える。同社はきっと変身するだろう。インターネット、コンテンツ、検索の分野で、Yahoo!は窮地に陥っているが、失ったシェアを取り戻すことに努めれば、すぐに変化が現れるはずだ」  前回のコラムでは、サブプライムショックで破綻(はたん)寸前のアメリカで見たこと、聞いたこと、感じたことを書いた。今回は日本のゲーム市場で起きるであろう“山火事”について語ろうと思う。  ロサンゼルスを中心にしたカリフォルニア州には多くのソフトウェアメーカーや映画会社の本社がある。分かりやすい例で言えば「ダイハード」でブルース・ウィリスがクリスマスに爆破した「ナカトミ・ビル」は、ウエストハリウッドの20世紀フォックス本社ビルで撮影された。映画「プリティウーマン」では、ブランドショップが立ち並ぶロデオドライブ、「ビバリーヒルズ・コップ」では同じくロデオの向かい側に建つリージェント・ビバリー・ウィルシャー・ホテルがロケ地として使われた。もっと渋いところを挙げると、ダウンタウンのフィゲロア・ストリートでは、デ・ニーロ&パチーノ主演の「ヒート」のクライマックスの銃撃戦が撮影されている。当時セガの社員としてロスで開かれたゲームの展示会「E3」見学に来ていた僕は、そのロケ現場に遭遇し、約100メートルのところでパチーノの銃撃シーンの撮影を生で見た。  今回のロス滞在中、日本のゲームソフトメーカーの現地法人スタッフとたくさん面談することができた。多くは日本で働いていたメンバーが、現地での流通やソフトのローカライズやオリジナル制作の可能性を信じて、アメリカでの歴史を築いてきた。彼らを見ていて思ったことは、日本のゲームメーカーとしての「自信」と、世界というマーケットの中における商品の作り方の間で違和感を持った。  詳しく説明しよう。彼らの主な仕事は、日本で開発されたゲームソフトを、アメリカを始めとした英語圏でのマーケティングとローカライズが中心だ。つまり日本では売れることを運命付けられた作品を海外でさらに売ることである。日本の本社からすれば、「日本で、これだけ売れたんだから、アメリカでもたくさん売れよ」ということである。しかし、現実にはそうもいかない。特にRPGのカテゴリーでは苦戦が続いている。  日本では常にゲーム販売ランクの上位を独占するRPGが「売れるか」すら分からないのである。その答えはアメリカのゲーム会社と話をしていて分かったことがある。日本独特のRPGというジャンルは、非常に特殊なジャンルなのではないかということだ。個人的な見解だが、RPGのルーツはテキストを多用したテーブルトークRPGで、その代表例が「ダンジョンズ&ドラゴンズ」であるといわれている。  つまり、日本で流行しているRPGは、紙とエンピツとサイコロなどを使って遊ばれていたテーブルトークRPGのようなルーツを持っている。ここまではみなさんも異論はないだろう。しかし、その後、日本ではオリジナルのRPGテイストが確立されて現在に至る。つまり、すべてはあくまでも日本流にアレンジされた「剣と魔法の世界」がゲーム30年の歴史を支えてきたと言っても過言ではないだろう。  そう、その視点はあくまでも日本人がみた「剣と魔法の世界」である。それはどんなにカッコよく描かれていても、ハリウッド映画で場面に登場するヘンな日本人のような世界観、キャラクター観の裏返しではないだろうか。すべての日本人がメガネをかけて、スーツ着て、デッパで、目が細くて、カメラをぶら下げているわけじゃない。しかし、似たようなことがゲームの世界観のなかで起こっているのではないだろうか。ゆえには、常に起こるのは「なんかヘン?」という感覚ではないだろうか。  ロス最終日の夜、ゲーム関連会社に勤務する古い友人と会食することができた。いわく「日本を離れて分かることがある。かつての日本はゲーム開発の部分では世界をリードしていた。でも、今はどうやら違うし、大きなメーカーほど、そのあたりがよく分かってない。日本のクリエーターは自分の都合のいい方法でゲームを開発している。その結果、ユーザーインターフェイスやゲームが持つ快適な操作性を否定しているのではないか。長いこと甘やかされて育ってきた子供が、いまさら野に放たれたとしても、そりゃ3日ともたたずに食い殺されるだろうね。だって、世界にはもっと強いヤツがいるからね。12月に発売になった『フォールアウト3』がいい例だと思うよ。日本のクリエーターが『できない』といい続けてきた、瞬時に視点が切り替わる。一人称、三人称、俯瞰(ふかん)の視点までね。コレって今まで、言い訳ばかりで誰もやろうとしなかったことなんだよ。できない理由を探しているのが日本のゲームメーカーじゃないかな」。  はるか彼方の山火事だと思っていたら、火の粉が飛んできて屋根が燃え始めた。でも「このくらいなら消せるんじゃねーの?」と思っているようなフシがある我が日本のゲ−ムクリエーターたちよ。すでに燃えているのは自分たちかもしれませんよ。