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それが無慈悲な市場経済の現実である。
この世界では多くのふつうの労働者にとって、〈価値意識としての個人主義〉は、逆説的ながら〈生活を守る手段としての集団主義〉によってこそよりよく保障されてきた(熊沢1989)。
「集団主義」という言葉が忌避されるなら、能力主義的競争を緩和する「連帯主義」と言いかえてもよい。
そしていささか「ないものねだり」かもしないけれども、「認識と提言」に対する私の最後の批判点は、この種の連帯の模索という考え方がここにはまったく欠如していることである。
一人ひとりでがんばらせるのが能力主義管理だからこれからは一人ひとりでがんばるほかはないとしか、「識者」はいえないのだろうか。
私のいう連帯、〈生活を守る手段としての集団主義〉の営みが具体化される単位は、くりかえし述べてきた労働の性格、労働者構成の変化、労働市場の動向によっていくつかにわかれるだろう。
とりあえずは日経連『新時代の「日本的経営」』のめざす従業員の3分化がある程度は進行するものと考えてみる。
その上で右の「単位」について、すなわちあるまとまりをもつ労働者のグループ形成のヴァラエティについて考えてみよう。
そのグループごとに、能力主義管理へのスタンス、そしてそこにつちかわれうる規制のかたちは、いくらか異なるように思われる。
たとえば、原則的にはなお終身雇用の適用される「長期蓄積能力活用型」従業員にも、かなり不分明ながら二つのグループがある。
1つは、高い比率で管理者に経上ってゆくエリート社員たち(グループA)だ。
この人びとの場合、可能性のある連帯の単位はやはり企業社会であろう。
このエリート社員たちはすでに能力主義の原理に親和的であって、彼らが能力主義管理に真向から抵抗するとはまず考えられない。
それゆえ、企業社会としての連帯の営みも控え目で、要望もたとえばキャリア展開(昇格や人事異動)ルールの公平化と客観化、雇用と昇給ミニマムの保障、納得のゆく人事考課などにとどまるだろう。
しかし日本的能力主義を前提としてもなお、集団的にチェックされるべきポイントは数多いということはできる。
いま一つのグループは、フレキシブルな働き方は要求されるにしても基本的には企業内の特定の職域で地味な仕事を続けてゆくノンエリート社員たち(グループA2)である。
この人びとはもともと、企業社会というよりは職場社会の住民であって、その文化(考え方)も本来、競争を制限し平等処遇を重視する傾きをもつ。
今のところは、ここ来は非競争主義の文化もエリート社員の競争文化に牽引されて圧倒され、職場社会も企業社会に統合されている。
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